国鉄交流･交直流電気機関車

国鉄交流・交直流電気機関車

（2002.03.24　更新）

■国鉄ED75-0　交流電気機関車（天賞堂製品）

ED75 0　初期形（天賞堂）

国鉄の交流電化は仙山線のモデル線区から始まり、各交流電化区間向けの試作要素の強い電気機関車が開発・使用されてきました。その後の本格的な交流電化区間の延伸により、標準化による保守点検の容易さ、運用の効率化やコストの低減を目的とする機関車が必要になってきました。そこで開発されたのが交流電機の完成版ともいえる標準機、ED75形電気機関車です。それまでに実用化・確立されてきたED71～74の技術を総括し、試作形が登場したのは1963年の常磐線・水戸～平間の交流電化で、実用試験後に翌年から量産が開始されました。その後の交流電化区間の延伸による増備のため、仕様の異なる番台が複雑に別れています。主なものでもオリジナルの０番台、耐寒・耐雪形の50番台、耐寒・耐雪を強化し、各部が改良された100番台、九州向けの60Hz仕様である300番台、高速形の1000番台、そして最終増備形となった700番台があります。また特筆すべきものとして北海道の交流電化のための先行試作車としてサイリスタ制御式の500番台もあります。
　本形式は常磐線の交流電化に際して登場した試作形１・２号機の経験を踏まえて量産された機関車で、２号機をベースに３～49号機が製造されました。

ED75 0　初期形（天賞堂）

車体の基本的な構成は従来の交流電機シリーズと同様で、真鍮プレスの車体を半田付けで組み立てたものです。車体側面のエアフィルターはエッチングでルーバーを表現し、プレスで軽く浮き出させたものを半田付けしているため、車体側面とはほぼツライチになりすっきりしています。また窓ガラスもＨゴムがグレーになったものを使用しています。天賞堂のED75は製品化された歴史が古く、それだけに再生産されるたびに改良が施されてきました。モデルはED75としてはほぼ最新バージョンのもので、動力装置はTAギアシステムを採用していないものの、コパル製の缶モーターにフライホイールを取り付け、密閉式ギアボックスによる駆動方法としてはもっとも新しいものに分類されます。屋根上に所狭しと並んだ高圧機器が特徴で、PS101パンタグラフもスリ板が精密化され、バネカバーもかっちりと角が出たパーツになっています。またランボードは脚部が雨樋の外側に出るタイプで、その脇から出るパンタグラフへの空気碍管の配管はロスト製に改良されています。また前照灯は従来から定電圧システムによる点灯装置を備えていましたが、本製品ではさらにテールライトも点灯化されています。そのため、床下にはそれらのON-OFFスイッチが設けられています。

ED75　３兄弟

当鉄道に在籍しているED75を並べてみました。モデルはいずれも天賞堂の製品で、写真左から700番台、1000番台、そして０番台となっており、それぞれ形態が異なることにお気づきになるでしょうか。右端の０番台は常磐線用として製造されたため、後の100番台や1000番台のように積極的な耐寒・耐雪構造とはならず、前面窓下の通風口、窓ガラスのデフロスター、そして丸みを帯びたスカートが特徴的な姿となっており、ジャンパー栓の数も少なくなっています。なおモデルではヘッドライトレンズが取り付けられています。中央の1000番台は前面窓下通風口の廃止や角張ったスカート、そして高速運転用にジャンパー栓が増設されています。左端の700番台は実物においても最終増備形となり、交流電機の大きな特徴であった高圧機器類を室内に収納したことにより屋根上がすっきりしたことと、下枠交差型のPS103パンタグラフを採用したことにより、とても洗練された姿となりました。０番台は製品そのままですが、1000番台と700番台は古い製品に手を加えて再塗装を行ったものです。

■国鉄ED75-1000　交流電気機関車（天賞堂製品改良）

ED75 1000（天賞堂加工）

オリジナルの０番台がＭ形と呼ばれているのに対し、1000番台はＰ形とも呼ばれています。1000番台は耐寒・耐雪装備を強化した100番台を基本に、高速列車牽引用としてブレーキ増圧装置ならびに電磁ブレーキの搭載、そして特急列車用の連絡電話設備を設けたもので、製造当初は青森機関区に集中投入され、黒磯～青森間や常磐線の旅客列車（特急列車）や高速貨物列車の牽引に使用されました。ところでED75はシリコン式整流器を採用したものの、細かい電圧制御が困難で、空転の発生や粘着性能を向上させることができませんでした。そこでこれらを機械的に解決するために、無心皿、引張棒方式の特徴的なジャックマン式の台車（DT129系列）をED74に続いて採用しました。モデルでもこの引張棒を軟質プラにて表現しており、車体足と可動できるように接続しているのが天賞堂製品の特徴です。ただしそのままでは台車の回転運動を妨げますので、ギアボックスと台車枠はわざとガタができるように組み立てられています。モデルはこれらの特徴を的確に再現した天賞堂製品に手を加え、屋根の吊りフックなどを追加しました。それだけにたいへん愛着のある一台です。1000番台は耐寒・耐雪構造を強化しているため、写真とは反対側の平滑リアクトル装置の排風カバーが大型化され、エアー関係の配管が保温箱に集約・収納されている点が０番台とは大きく異なる部分です。

ED75 1000（天賞堂加工）

０番台の屋根と比較するとそれほど大きな変化はありません。しかし細かい部分を比較すると製品化された時期が異なるためいろいろと差異があるのは０番台の項目で述べたとおりです。例えばパンタグラフの上昇用バネカバーが丸みを帯びていたり、空気碍管は単なる真鍮線で表現してあります。本モデルではこうした基本的な部分には手を加えず、代わりに屋根上板の吊りフックを0.3mmの真鍮線で表現してみました。電暖表示灯は大型化されたものを取り付け、Ｈゴムはグレーになったパーツに交換してあります。また信号煙管は銀色に塗装し、キャップの部分を黒に塗装してみました。本モデルはモーターにMV8を使用していた古い製品のため、キャノンモーター（EN22）に換装しました。この際に走行の安定性を得るため当時分売されていたKATOのDD51用フライホイールを取り付けました。そうした改造によりとても気持ちよく走ってくれます。

ED75 1000（天賞堂加工）

1000番台（手前）と０番台（奥）の屋根上を示しています。1000番台は再塗装を行っているため、ランボードをグレーに塗り分けて屋根上の視覚的なアクセントを付けてみました。モデルはこれらの特徴を的確に再現した天賞堂製品に手を加え、屋根の吊りフックなどを追加しました。愛着のある一台です。模型的に見ると両者にそれほど差異は見られませんが、画像に示すようにパンタ後方の主整流器用放熱通風器が０番台では左右別に取り付けられているのに対して、1000番台では左右一体の構造になっています。そのため抵抗器用放熱通風器の形態や高圧碍子の取付が若干変更されているのには驚きです。メーカーのこだわりが伺える部分ですね。

■国鉄ED75-700　交流電気機関車（天賞堂製品改良）

ED75 700（天賞堂加工）

700番台は奥羽本線の秋田電化や羽越線の電化に際して登場したED75の最終グループで、耐寒・耐雪構造の強化と日本海側を走行するため塩害対策が強化されました。また技術の向上で主変圧器や主整流器といった主要な機器の大幅な小型軽量化が施され、車内空間に余裕が生まれた結果、交流機の特徴であった屋根上の高圧機器類のすべてを室内に納めることが可能となり、他の交流機関車と比較すると屋根上がすっきりしてとても洗練された姿となりました。モデルは運転室側窓が従来のＨゴム支持ではなく、ユニットサッシ化された最終形です。PS103下枠交差形パンタグラフとすっきりした屋根が特徴です。本形式はED75のなかでも車齢が若いものの、相次ぐ貨物列車の削減や旅客列車の電車化により余剰を生じたため、その後開業した津軽海峡線の専用機ED79に改造されたものが多数あります。

ED75 700（天賞堂加工）

写真左側は700番台、右側は1000番台の運転室側面を示しています。1000番台の運転室側面窓は従来のＨゴム支持ですが、700番台はユニットサッシ化されており、側面の印象がまったく異なります。こうした側面窓の変更は本番台のみならず、EF71の最終増備形や津軽海峡線用のED76-551にも見られます。台枠部分のエンドマークや換算表記、所属区名にレタリングを施すとぐっとリアルになります。モデルはフルイチの缶モーターにフライホイールを取り付け、ダイキャスト製の密閉式ギアボックスにより駆動する天賞堂独特のものです。ちなみに当鉄道では1000番台と重連運用を行うため、1000番台の動力更新化に合わせて、こちらもキャノンモーターにフライホイールを組み込んだ動力ユニットに換装しました。こうした動力更新化は古くて調子の悪くなった天賞堂のEF57にも採用する予定です。

ED75　３兄弟その２

こうして眺めてみると赤い電気機関車はほんとうにいいですね。旧形客車や寝台特急列車はもちろん、雑多な形式で構成される貨物列車や重連でのコンテナ列車など、牽くものを選ばないオールマイティーな役者ですが、編成美という点ではED75と同じ塗色（赤２号）を採用した50系客車を牽く姿がいちばん似合うのかもしれません。当鉄道では旧形客車による夜行列車や荷物列車、貨物列車の牽引にたいへん重宝しております。ここまでくるとヒサシの付いた50番台が欲しくなってしまいます。

■国鉄ED76-500　交流電気機関車（天賞堂製品）

ED76 500（天賞堂製品）

函館本線の小樽～旭川電化（当初は滝川まで）に際しては北海道という酷寒地での使用を考慮して試作の意味もこめてサイリスタ制御のED75 500番台が投入され、長期実用試験が行われました。その結果を踏まえて量産されたのがED76 500番台交流電気機関車で、昭和43年から製造されました。ED75ではシリコン整流器、低圧タップ・磁気増幅器による電圧制御を行っていましたが、その増備途中からサイリスタによる電圧制御方式が開発され、当初の誘導障害等を克服してようやく本形式において結実しました。北海道という環境を考慮して強力型の列車蒸気暖房装置を搭載したため、九州向けのED76と比較すると全長、重量とも増加し、中間従台車を設けることにより軸重を軽減させています。また重量貨物列車牽引のため重連総括制御となり前面に貫通扉があるのも九州向けの機関車とは異なります。制御機器類はED75-700番台を参考に小型軽量化が図られているため、高圧機器を車内に納めることが可能となり、あわせて耐雪機能が強化されました。長い車体長とPS102下枠交差形パンタグラフの採用によりすっきりした屋根が特徴です。モデルは天賞堂の初回製品で、フルイチの缶モーターにフライホイールを取り付け、ダイキャスト製のギアボックスを駆動しているおなじみの方法です。

ED76 500（天賞堂製品）

天賞堂のED76-500は過去２回ほど生産されました。本モデルはそのうちの初回製品で、1989年に製造されました。十数年前の製品ですが、基本的な設計がしっかりしているため、細かいパーツ類をのぞけば再生産された現行品と比較しても遜色がありません。模型製作時における設計の大切さを再認識させられる好例ではないでしょうか。モデルはとある模型店の委託品コーナーで見つけたもので、現在の中古品市場では珍しくコストパフォーマンスに優れていたため、思わず購入してしまいました。運転室窓上のひさしや助手席側の運転室窓下にあるタイフォンがとても特徴的です。また解放テコも通常とは異なる形態をしています。初回生産のため手すり類はやや太く、Ｈゴムも白色のものを使用していますが、缶モータとフライホイールの採用により走行はきわめてスムーズです。また定電圧点灯のヘッドライトは同社の交流電気機関車シリーズに古くから採用されているものと同じです。

ED76 500（天賞堂製品）

ED76の特徴ともいえる中間台車（TR103F）が特徴です。０番台や1000番台では空気バネへの圧力を変えることにより軸重を変化させることが可能でしたが、500番台では固定軸重となっています。初回生産ではこの中間台車の上部にあるSG関係のパイピングが省略されていましたが、最新製品ではこれらのパイピングや屋根上の吊りフック等が追加されています。またED75-501やED76-500で特徴的な側面エアフィルターの最下部にある切り欠きもしっかり表現されています。

■国鉄EF81交直流電気機関車（天賞堂製品）

国鉄の電化は直流区間は1500V、交流区間は商用周波数の違いにより20000V・50Hz・60Hzの３本立てになりました。ところがこれらの電化区間が延伸するにつれて互いを接続する必要が生じてきました。なかでも日本海裏縦貫線は北陸本線が交流20000V・60Hz、信越本線が直流1500V、羽越本線および奥羽本線が交流20000V・50Hzという複雑な電圧により一本のルートが形成されました。これらをまたがって運行する列車はそれぞれの電化方式に合致した機関車が必要でしたが、経済的にも時間的にもロスが多いため、それぞれの区間を直通可能な機関車の開発が急務となりました。そこで誕生したのがEF81交直流電気機関車で、直流1500V、交流20000V、50Hz・60Hzの３電源を走行できるオールマイティな機関車として昭和43年から152輛製造されました。出力は直流区間がEF65と同等、交流区間はED75を上回っています。両端台車はDT138、中間台車はDT139とし、重連総括制御を持たないため、前面形状は非貫通型です。また海岸線を走行することから耐塩害対策として交流用の高圧機器類をすべて室内に収納しているため、PS22下枠交差型パンタグラフとともにあっさりした外観をしています。製造は数次にわたったために細かなバージョンがありますが、なかでも関門トンネル専用にステンレス車体で製作した300番台はその外観や色彩が異彩を放っています。使い勝手がよいため、JR化後にも450番台や500番台が製造されました。

EF81とED75（天賞堂製品）

天賞堂のEF81は古くから製品化され、本モデルは1987年頃の製品だと思われます。この時代の特徴として、はめ込みのプラ窓はＨゴムが白色で、車体側面のエアーフィルターはエッチングパターンを裏から半田付けしているので車体表面とは大きな段差があります。最新製品ではこれらが改良されてグレーのＨゴムを使用し、エアフィルターもエッチングされたパターンをプレスで個別に押し出しているため、車体側面とはツライチになりました。動力装置はフルイチの缶モーターにフライホイールを取り付け、ダイキャスト製の密閉式ギアボックスで駆動しています。細かい部分では中間台車の横動コロ受けが車体裾部分に表現されています。床下器具の間に見え隠れするATS車上子が何ともいえずいい雰囲気を出しています。実物は３電源直通可能なオールマイティーですが、当鉄道においても運転頻度が高く、運転会での使用実績は他の機関車の群を抜きます。
ところで、EF81を製品化したメーカーは必ずといっていいほどEF64-1000を製品化していますね。これって模型業界の常識なのでしょうか。

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